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「ほら、千秋(ちあき)ちゃんは戻った戻った!」
背中を押され動揺しながらも、これだけは譲れなかった。
「梓さん、下の名は……」
「あら、素敵なのに」
それは彼女のささやかな反撃。
「打ち上げ、盛り上がろうね」
高嶺の花だと思っていた梓が、こんな俺を好きだったなんて信じられるだろうか。だけど、告白されたのは事実で。
「はいっ!」
元気に返せば、「よろしい」という表情で彼女は微笑む。
打ち上げの後……俺は初めて彼女の部屋に行く。
「勝負下着、見る?」
「あ、後の楽しみにとっておきますっ!」
くすくす笑う梓に見送られ、俺は医務室を後にした。
◆◆◆
走って走って、せっかくもらったプレゼントのガウンを着るのを忘れていた事に気付く。心臓もいろいろな意味で、バクバクだ。
屋上に出れば、会場はまだまだ盛り上がっている。少しくらいならば遅れても許されるだろう。外灯の下にあるベンチに座り、ガウンに袖を通した。
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