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『大漁だ、大漁だーっ!』
あれ? ここはどこだ?
見渡せば大海原。そして、周りには。
『祐介……角田先輩に蝶野さんも!』
『千秋! 腰、引けてんぞ!』
『気合い、入れろって!』
『闘魂注入ってか?』
さっきまで四人で特設会場で、プロレスをしていなかったっけ?
角田先輩がジャーマンスープレックスを祐介にかまして、蝶野さんがカウントして。
『陸奥屋丸、発進っ!』
『しゃ……社長っ!?』
何故か艦長スタイルの下柳社長が前方に真っ直ぐ指させば、後ろで塩田常務と俺の直属の上司である馬場薫(ばば・かおる)鮮魚マネージャーが旗を振る。
みんながいた。梓も佐原も、パートさんもバイトさんも、テナントさんも取引先さんも。
「そっか……」
俺が勤めていた場所は、大きな船だったんだ。いい時も悪い時も共に乗り越え、進んで来た。凪を漂い、荒波に挑む。
「それらは全て……」
『そう』
いつものように社長が穏やかに微笑む。
『御客様の為に』
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