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◆◆◆
目覚めて、奇妙に納得する。
「大丈夫ですか?」
多分また憑かれちゃったんだろう。疲れていたりすると、ほんの少しだけ持っていかれたりする。
未だに自分の体を見失った事はないから、きっと優しい霊なのだ。
だから、ちょっとだけ貸したみたいなもの。何があったかはわからないけれど。
「どんな……」
夢を見たと言った俺を覗き込む高校生くらいの男の子の表情を見れば、今回もいい方向に進んだのではないかな。
「マグロ漁船、ですか」
少年は笑う。花火に照らされ、ぱっと儚く。
「俺、行かないと」
立ち上がり、告げる。
「まだ仕事残ってるんで」
「え? 社員さんですか?」
白ガウンに裸パンツじゃ説得力に欠けるかな。
だけど俺は誇りに思う。この陸奥屋百貨店で働けた事を。そして必ず次に繋げると約束する。
『全ては御客様の為に』
そう教えてくれた社長の思いに応える為にも。
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