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阿「げっ。またあいつ……」
心「どうかしたから?」
展望台には先客がいた。
学園の制服を着ている男子。展望台からの景色をカメラで撮っているように見える。
阿美さんはその姿を見つけるなり、気まずそうに顔をしかめていた。
阿「じゃ、じゃあ2人とも。後は任せたわね。私は急用を思い出したから」
心「え。ちょっとっ」
阿「あはは。また後でね」
心「…………」
そしてそのまま、山を降りていってしまった。
心「置いてかれたわね」
詩「……置いてかれたね」
心「追うのも疲れるし。とりあえず休もうかしら」
詩「そうだね……」
……。
展望台。
山の中に突如現れる人工の地面。
崖に突き出すように欄干があり、ここから叶井町を一望できる。
教室一面分ほどのそのコンクリートの床は、そのほとんどが、風が木枝からはたき落としたのであろう、緑の葉で一面覆われていた。
心「なるほど……結構な散らかりようね」
詩「はぁ……。疲れた」
私達はそんな展望台の端に並べられていたベンチに腰掛ける。
?「お。珍しいな。こんな所に人が来るなんて。観光目的じゃねぇよな。それウチの制服だし」
心「ええ。掃除しに来たの」
?「……なぁ、柴門って人知らね? 学生会副会長の。今日ここに来るって聞いたから、待ってんだけど」
心「彼女なら私達と一緒に来たわ。ついさっき降りていったけど」
?「なに? それを早くいえよ!」
彼女が目的だったらしく、その男子も阿美さんを追うように山を降りていってしまった。
心「何だったのかしら」
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