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私は学園へ向かう。
天気はこれ以上ない程の快晴。
アパート『ガーデン・カナイ』を出て南へ。
部屋のカーテンを火照らせていた陽は、今は海岸沿いに広がる海一面を眩しく輝かせている。
そして水平線から火山の噴火のように立ち上る、入道雲。
絵に書いたような、田舎の夏景色だ。
この町、叶井町(かないちょう)は、海以外の3方向は全て山に囲まれている。
山が多いせいか、地形的に熱がたまりやすい。というのをお父さんに聞いた気がする。
うちのお父さんは、叶井町にある小さな空港のパイロットだ。
航空機は気象の影響を大きく受ける。だから地形的要因によるこの町の気象の特色にも詳しい。
それに加え、なんでも、その空港の中では、お父さんはトップの飛行機操縦技術を持っているらしい。
そんなお父さんを私は誇りに思っている。きっとお母さんもそうだっただろう。
……話が逸れた。
そう。取りあえず、この町は地形的に暑いんだということ。
きっと都会のコンクリートジャングルにも負けない地獄だ。多分。
私は夏は嫌いだ。
理由はただ一つ。単純に、暑いから。
冬は良い。寒ければ厚着して、毛布にくるまれば、乗り越えられる。
でも、夏はどうだ。たとえ全裸になったとしても、涼しくなるわけではない。
文明の利に頼るしかない。
そうすれば電気代が馬鹿にならない。
私だって1人暮らし、無駄にお金を消費したくない。
……それが、私が学園に登校するもう一つの理由。
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