■プロローグ

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私は学園へ向かう。 天気はこれ以上ない程の快晴。 アパート『ガーデン・カナイ』を出て南へ。 部屋のカーテンを火照らせていた陽は、今は海岸沿いに広がる海一面を眩しく輝かせている。 そして水平線から火山の噴火のように立ち上る、入道雲。 絵に書いたような、田舎の夏景色だ。 この町、叶井町(かないちょう)は、海以外の3方向は全て山に囲まれている。 山が多いせいか、地形的に熱がたまりやすい。というのをお父さんに聞いた気がする。 うちのお父さんは、叶井町にある小さな空港のパイロットだ。 航空機は気象の影響を大きく受ける。だから地形的要因によるこの町の気象の特色にも詳しい。 それに加え、なんでも、その空港の中では、お父さんはトップの飛行機操縦技術を持っているらしい。 そんなお父さんを私は誇りに思っている。きっとお母さんもそうだっただろう。 ……話が逸れた。 そう。取りあえず、この町は地形的に暑いんだということ。 きっと都会のコンクリートジャングルにも負けない地獄だ。多分。 私は夏は嫌いだ。 理由はただ一つ。単純に、暑いから。 冬は良い。寒ければ厚着して、毛布にくるまれば、乗り越えられる。 でも、夏はどうだ。たとえ全裸になったとしても、涼しくなるわけではない。 文明の利に頼るしかない。 そうすれば電気代が馬鹿にならない。 私だって1人暮らし、無駄にお金を消費したくない。 ……それが、私が学園に登校するもう一つの理由。
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