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詩「はぁ~……ここは天国だねぇ」
学園の図書室。
ここは夏期休暇中、基本的に学生に開放されている。
勉強するため。本を読むため。そんな制限は特にない。ただ、平日の朝の9時から夕方の5時までなら、誰でも利用できる。それだけだ。
ただし、私たちの目的は本や漫画を読むことだけではない。
文明の利を存分に享受するためだ。
そう。この図書室は。一日中エアコンが利いている。
……これが、この真夏の時期、私達が学園へわざわざ足を運ぶ一番の理由だ。
詩「そういえばさ、日記の宿題出たよね。あれ、ちゃんと毎日書いてる?」
?「ええ。まあ」
詩「面倒だよね……。一応寝る前にやってるけど、私、文章書くの下手だし」
?「そうかしら。三行くらい、すぐに埋まると思うけど」
詩「ぐ~……」
?「……お弁当、食べる?」
詩「わーい」
友達の心ちゃんと2人きりの図書室。
適当な本を読んでいた彼女は、お腹を空かせていた私を見かね、バッグからお弁当を出す。
これは彼女がいつも私に作ってきてくれる、朝食兼昼食。
毎日2食だけしか食べない私の命綱。
テーブルに置かれた時点で、私の口内はもう大洪水だ。
詩「心ちゃん、いっつも食べないけど、持ってきたらいいのに」
心「その必要はないわ。私、家で食べてきてるし」
詩「私は心ちゃんと、一緒に食べたいな」
心「嫌よ。そんな事したら、詩が私のお弁当に卑しくかぶりついている顔がじっくり見れないじゃない」
詩「えっ。私、なんか食べる時に変な顔になってる?」
心「ええ。とっても卑しいわ。犬みたい。見てるとぞくぞくする」
詩「わんちゃんかぁ。それは可愛くていいね」
心「さぁ。今日も、私の作ったエサを喰らうといいわ」
詩「わーい。いただきまーす」
私は包みを開けると、匂いを堪能する間もなく、大好きなハンバーグを唾液の洪水に放り込む。
心ちゃんのお弁当はとても美味しい。
普段家でよく料理のお手伝いをしているだけある。
将来は家庭的で、良いお嫁さんになるんだろうなあ……。
お弁当以前に料理なんて、私にはとてもできない芸当だ。
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