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でも、この危機的状況は変わらずで。
「店長、独立されるんですよね?」
「ええ」
「そちらでもアルバイト、募集されますか?」
「それは……」
色々考え、軌道に乗るまでは、一人でやろうと決めていた。手伝いを頼むとしたら、身内にしようと思っていた。
「私、夢だったんです!」
莉乃君は更に更に近付いて来る。
「ケーキ屋さんになるの!」
もうどうしようもないくらいに近い。
「困りましたね」
「店長?」
課長に心の中で詫びながら、腕を広げる。
「私だって……こう見えて男なんですよ?」
小さな体をすっぽり包むと、ため息をついた。
「店長……」
認めるのが恐かった。ふたまわりも年下の少女に恋をしてしまったなんて。
「店長」
「はい」
真っ暗な天井を仰ぐのをどうにか止めると、莉乃君を見つめる。
「お祭り、行きたいです」
「え?」
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