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接客業とは無縁だと思っていた自分が三年間どうにかやって来れたのは、周りに恵まれたからだ。
食品統括マネージャーの棚橋(たなはし)さんを始め、陸奥屋百貨店の従業員さんには本当に御世話になった。
そして同様に、テナント仲間にも助けてもらった。お客様もよい方達ばかりで、常連さんもいてくれた。
何より隣で閉店のお見送りをする少女を見つめる。
莉乃君。君には心から感謝している。
「お疲れ様」
「お疲れ様です」
口々に互いに労いの言葉をかけ、片付けを終えた皆は屋上へと向かっていく。
「店長、後は私がやりますから」
「いや私がやるので、莉乃君はあがって下さい」
すると少女は、ぴたりと手を止めた。すでにフロアーには、二人しかいない。
「店長……」
「どうしました?」
ゆっくりと振り返る。徐々に照明は落ちていき、自分達がいる一角の灯りだけになる。あとはバックヤードへと続く広い通路を非常灯が続くだけ。
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