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「どどど……どうしましょう……」
「莉乃君。落ち着いて」
目に見えて明らかに動揺している少女に、冷静に話しかける。
長い付き合いから、わかってくれたのだろう。こくこくと頷くと、さくらんぼのごとき唇を開いた。
「御予約が一件、ありました……」
今日という日を迎えるにあたり、何度も確認した筈。私は莉乃君の差し出した予約票を受け取る。
「え?」
思わず洩らした呟き。
【御名前:田中莉乃】
【御注文内容:日下部雅人店長】
【特記事項:ずっと好きでした。私と付き合って下さい。】
ゆっくりと視線を上げれば心許ない灯りの下、うつむきながら莉乃君は告げる。
「御注文は……あなたです!」
数秒の沈黙。でも私には何分にも何十分にも感じられた無言の時。
『私には何時間にも感じられました!』
後から聞いたら、莉乃君。君はこう答えたね。
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