第3章

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拝借したパイプイスを組み立て腰掛け、話を続ける。 「そういえばさ」 「どしたの?」 窓から覗く空に目を向け、少年は続ける。 「今日は本当にいい天気だ」 「そう…だね」 由花の返事の声今にも消え入りそうな程小さく、少年を不安にさせる。 「こんな日本晴れの日は昔みたいに一緒に外を走りまわりたいな」 沈黙 返事がなく、少年は視線を由花に向ける。 「ゆ…か?」 少年は理解出来ずにいた。 今、眼前にいる由花を理解出来なかった。 何故由花が大粒の涙を流しているのか、少年はその理由が理解出来なかった。 「お、おい。一体どうしたんだよ?どこか痛いのか?」 由花は声を震わせながら、ただ一言を呟く。 ごめんなさい…と。 「な…どうしちゃったんだよ、お前」 「ごめんなさい」 大粒の涙は一滴、また一滴と由花の瞳から垂れていき、そのペースは段々と早くなっていく。 「わ、悪かったよ。俺が何かしたなら謝る、だから泣かないでくれ」 「違う…の」 震えた由花の声が続ける。 「あんたが…悪いんじゃない」 「なら…どうしちゃったんだよ?」 長い沈黙。 「帰って」 「…は?」 突然の言葉に少年は理解出来ず、鳩が豆鉄砲をくらったような顔になる。 「あんたの顔なんか見たくない。だから帰って」 「な…いきなり意味わかんねーよ。なんでそうなるんだよ」 由花は今出せる精一杯の声で 「いいから帰って!」 「わかったよ…帰る。もう来るかよ…このクソッタレ!」 バン 少年はイスから立ち上がり、病室から逃げるように出て行った。
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