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今日の授業も一通り終わった放課後、少年は委員会の仕事を行うために図書室にいた。
時半は五時半、白いレースのカーテンの合間から夕日が射し込み、図書室全体がどことなく哀愁を帯びていた。
今日の仕事は貸し出しされた本の冊数と返却された本の冊数を記録帳に記せば終了だ。
少年は仕事を手伝いに来てくれた桜井カナに言う。
「お疲れ様、今日は助かったよ。後は俺がやっとくから帰っていいよ」
桜井カナ、髪は腰まで掛かる漆黒のロングストレート、顔立ちはしっかり整い眼鏡をしているせいか知的な印象を受ける。スタイルも良く、由花同様、男子には陰で人気のある女子だった。
「ありがとうございます。ですけど最後まで手伝いますよ」
よく澄んだ耳触りのいい声が言った。
一通りの仕事は終了、今日は帰ろうかという話になった時のこと。カナが何か意を決したような面持ちで少年に言う。
「あの」
夕日…せいではない、明らかに顔が紅潮している。
「ずっと前から」
ああそういうことか、と少年は理解する。しかし…それに対する答えは既に決まっている。
「あなたのことが好きでした」
カナはそう言い俺の目をしっかりと見据える。嘘ではない…本当の気持ちなんだと少年は悟る。
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