百舌鳥

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多数の視線がある一点に注がれている。 多くの視線を集める先は円形になっており、そこにはぽつんとテーブルと2脚の椅子が置かれている。 椅子に座っているどちらもが大きめのフードに体格を含めた全てが覆われており、さらにそれぞれが仮面を被っているため表情はおろか、男性か女性か、はたまた人かどうかも判断することは出来ない。 1人は真っ白なフードに狐の仮面、もう1人は真っ黒なフードに鴉の仮面を被っており、一方は狐の嫁入りを思わせるものと相反するにはいささか物騒な中世ヨーロッパで恐れられたペスト医師を髣髴(ほうふつ)とさせるような出で立ちであったが、1つの机を挟んで互いに言葉を交わしている様子はない。 互いにつけている手袋が体を覆うローブの隙間からわずかに見えたかと思えば、盤上の駒が動かされる。それを繰り返し、静かな戦いが続いていく。 「……」 どれ位経っただろうか、白いフードの狐面の持ち主の動きが止まる。それを黙って見ていたペストマスクの人物が椅子から立ち上がると、どこからともなく歓声が沸き上がる。 『黒…“KING(キング)側”の勝ちです』 抑揚のない声が聞こえ、歓声がより一層大きく沸き上がったが、盤上に残された狐面も、すでにその場から立ち去ったペストマスクも、最後まで言葉を交わすことはなかった。 『それでは来月は“KINGのターン”となります』
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