壱日目

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- goes back slightly - -------------------------- ----------------- 野太い男達の声に混じって女の声も聞こえるが、いずれも穏やかではない声に、しかし理由を知らずに眉をひそめる者達はいない。 「赤一本!!」 「よぉしっ!」 隅にいた男達と中央の男が一斉に赤旗をあげると、仮面をつけていた男は竹刀を持っていた右手を高く掲げる。 「いいぞー!!」 少し高い場所には男と同じように勝利を喜ぶ男達の姿が見える。 その近くには横断幕と思わしきド派手なカラーリングが施されたモノに『必勝 新塾(しんじゅく)』と書かれている。 赤い目印がついた面を外した下には、短髪で力強い瞳が印象的な1人の若い男の顔が現れる。 まだ幼さを残している顔立ちとは対照的に、この対抗戦で誰よりも強かった男は、駆け付けた仲間に向かっていたずらっ子のように笑いながら歓声に両手で応える。 「先輩、マジかっけーっす!!」 「ホント強かったんすね!」 「やっぱいつも暇があれば筋トレとかしてる人は違いますね!」 「こら!お前ら先輩をもっと素直に褒めろ」 ヘッドロックをかける男の腕は細くてもしっかりと鍛え抜かれた印象を与えるが、それが単なる暴力としてではなく、仲間の労をねぎらうために振るわれていることは、囲んだ顔見知りでは誰でもわかっていることだ。
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