グラスホッパー

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「死なせたら、カシラに怒られる」 「私は彼女に謂れの無い……」 「盗賊は盗賊。報いを受ける覚悟はあったと思う」  そんな簡単なもんじゃねぇぜ。  俺が拾ったときのビヨンドは足以上に心がズタズタだった。  それでも、ヤツは助けた。 「大事な形見まで……」  思わず放っちまったらしい。  割れた姿はスマホ以上に悲惨さ。 「まだまだ一人前じゃねぇってカシラが言ってるのかもな」  女は首を振った。 「いいえ、あなたは立派な男性になりましたわ」 「え?じゃあ!」 「いけません!」  乗っかろうとして背を向けられちまう。まだまだ小僧だ。 「イテテ……あ?」  うまく立ち上がれないところに、女は肩は貸して言った。 「今は隣で」 「半人前かぁ。あ、草原……あれ?」  足元は拝借した安全靴。盗賊に感化されちまったのかね。  口元に一本指立てて言ったそうだ。 「内緒ついでに、今日だけ特別に見逃してあげます」 「え?」 「奢りですよ」  出してやるしかねぇだろ?  意地すら超えて、許せるようになったら一人前よ。  ああ、もちろんこいつさ。  淡き緑の喜び。  グラスホッパー。 了
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