グラスホッパー

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 立ち入り禁止のフェンスを超えて一息。 「ふうぅ……」 「草原なら私だって走れますわ」 「ダメだ。ここは何も変わってない」 「え?」  教会への大草原を跳ねるおんぶバッタ。  バギャ!ブロロン!  フェンスを壊して再びお邪魔虫だ。 「もう車が!」 「あんなポンコツなら大丈夫だ」  ゴゴゴゴ……ゴゴン……プスン  悲劇を記念に残すってな名目の放置さ。死体以外は何も片付けなかった。  あのタイヤじゃ、靴を貫く光物にやられるだろうよ。 「教会は四方が綺麗な窓だったんだ」 「例の爆発で破片が散ったのね。え?重傷の彼女が捕まったのは道の向こう……」  シスターは不思議だったろうな。振り返って見たその距離が。 「バッタの話はその時さ。あん時もこうやって走れればなぁ……」 「まさか、あなたの足は……?」 「ズタズタになって腐っちまった」 「ひっ……」 「で、どうすんだ?何かあるんだろ?」  気がつけば、廃墟と化した教会の前。窓が吹っ飛んで、まるでレンガの宮殿だ。  焦げた臭いの残る礼拝堂の奥。シスターは鐘楼の階段へ向かわせた。  だが、爆風が瓦礫のダムを作ってたのさ。 「これでは屋根へは……」 「任せとけ」
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