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なかなか無茶な注文だと思うぜ。
教会はウチのバーが八つは入りそうな、でかくて高い立派な建造物だ。その三角屋根の上に連れて行けという。
さすがの小僧もこれはよじ登るしかない。
持ち前の身軽さで跳ねて掴んで逆上がり。
それでも爆発と風化でガタガタだ。折れたり崩れたりってな。
ガラッ
「わっ!」
「……っ」
手元のレンガが崩れて義足が滑る。
片手のサーカス。シスターも見てられなかったろう。
だが、ヤツは反動をつけて持ち直す。軽業師ってヤツだな。
小僧が登っちまえば女も大したタマ。
ロープを固定すりゃあ、壁を歩くように登ったそうだぜ。
「鐘楼の壁の扉」
その教会は屋根に出るようになってねぇ。屋根と鐘楼の設置面には、両開きの小さな木の扉があるだけだ。
「これ窓じゃない?開かないけど」
「内側から鍵がかかってるのかしら?」
四つの柱に囲まれた鐘は頭の上。小僧はひょいと縁に飛び乗った。
「っと、と……」
鐘を鳴らす紐が垂れ下がるのは、息を呑むような穴倉だ。点検用の螺旋階段も俺なんかには肝が冷える。
だが、小僧は器用に降りると内側から窓を開けた。
「やあ、ジュリエット。あ、逆か」
くだらねぇ事ほざくほどに、世代を疑う明り取りだ。
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