グラスホッパー

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「鐘楼だけは大丈夫だから」 「え?」  ケリをつけんとゼブが銃を向ける。 「ごめんなさい!あなたは幸せになって!」 「あっ」  そこでシスターのとった行動は奇妙だった。  箱の入っていた穴に手を突っ込んだんだ。  ガチッ!  ゴゴゴゴ…… 「彼女がその気なら!爆弾なんて必要なかった!」 「なんだと!?」  ガコン!ガコン!  柱が倒れ、壁が内側に傾く。  中央からアリジゴクのように屋根が崩れる。 「これも、無実の叫びよ!」 「うわあああ!」  悪党たちは地獄の穴に吸い込まれた。  シスターは小僧の方を向いて、なぜか後ずさる。 「早くこっちに!」 「……さよなら」  贖罪なのかもしれねぇな。  シスターになったのもそういうことだろう。  小僧はどうしたかって?  決まってるだろ。  飛び込んだよ。地獄の穴にな。  壁を蹴って  空中で抱きかかえて  崩れる支柱で勢い殺して  そうやって何度も跳ねた。  ドン、ドン、バキャ  着地で義足は片方がポッキリ。  古傷の痛みは想像を絶するだろう。  それでもやりとげやがった。  鐘楼が見下ろす瓦礫の上で、息をしてるのは二人だけさ。 「どうして?」
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