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グラスホッパー
歩きスマホはいけないよなぁ。
そんな現代的な話が、政変後間もないこの国にも訪れたわけさ。
ドゴッ
スクーターに轢かれたのは小僧。
轢いたのは何やら急いでいたシスターだ。
ガシャン!
小僧は放置されたガラクタの山に突っ込んだ。
ひび割れた中古スマホの表示は新聞記事。盗賊団のテロ容疑が晴れると書いてあったとさ。
駆け寄ったシスターは妙齢の美女。
「ああ!神よ!お許しください!」
許しを請うのはまず小僧にするべきだな。
奴は身をガラクタに埋め、足のみを出していた。
その足が、手で顔を覆わせ、さらに懺悔の膝をつかせるわけだ。
「足の不自由な方をこのような目に……」
小僧の足は両足とも義足だった。一風変わった、フックのようなもんだ。
「あの?もしもし?……大変!」
早く起せと言わなかったのは、気を失ってのびてたからだろう。
ガラガラ……
シスターは急いで小僧を引っ張り出し、背負った。
「うんしょ……」
辺りを見回しても、助けを請えるような人間はいない。ここは自分でどうにかしないといけない場所さ。
だが、非力な女には酷な作業だ。
「ん、誰か、病院……え?」
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