「賭けの代償」

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「で?」 「何が?」 私は、喫茶店の雰囲気に馴染めないまま、目の前に座りくつろいでいる人をを睨んだ。 なのに目の前の人は、すいませーん、プリンを追加でー、なんて、笑顔を浮かべながら店員を呼び止め、注文に一生懸命だ。 私の気持ちも、少しは考えなさいよ。 別に気を使って、何かを頼んで欲しいわけではない。 突然、30分前に呼び出した理由が知りたいだけ。 『大事な、話があるから、会いたい。いつもの喫茶店で30分だけ待ってるから』 寂しそうに呟いたから、何かあったのかと思って、財布と携帯だけを持って急いで、アパートから走って来たのに。 『へぇ、意外と早いね』 なんて、苦笑いされた私の立場ってなんなの! 「で、用事って何?」 グラスに入ったオレンジジュースに苛立ちをぶつけながら尋ねた。 「あっ、そっちね」 「・・・・・・それ以外、呼び出す理由があるんですかねぇ」 小さく皮肉を込めて呟いた。 「えーっ、一杯あるよ。 ただ会いたかったとか?」 一瞬、心臓が高鳴った。 が、そんな訳ない、と自分に言い聞かす。 「疑問系ですか」 「でも、会いたかったのは本当だよ」 ニコリっと微笑まれて、息が止まりそうになる。
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