「賭けの代償」

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お待たせいたしました、と店員が持ってきたプリンを輝く瞳で見つめながら、目の前の人が微笑む。 私は、小さく溜め息をついた。 なんでこんな奴が気になり始めてるんだろう、と思いながら。 出会いは、今から三年前。 社員旅行で行った海で、同僚の人たちと一緒に船をチャーターした。 すると、誰かが言った。 『陸まで競争しよう』 勿論、みんなは大反対。 『お前ら、俺に負けるのが怖いんだろう?』 そう言われてカチンっときた私は周りの忠告も聞かずにその挑発に乗った。 『受けてやろうじゃないの!その台詞そのまま反してやるから』 そう言い放って、海に飛び込んだ。 しかし、海の潮の流れの急さで思うように前に進まない。 泳いでも泳いでも、差は開いていく一方。 「もう、限界、かも、っ」あんな言葉に乗るんじゃなかった。 後悔が襲いかかる。そして、左足に鈍い痛みが走った。 「あっ」 息が、出来ない! 私は完全に溺れかけていた。 しかし、みんなが乗っている船は見当たらない。 「っ、た、たすけ、うっ」 あぁ、多分、死ぬ。 そう思いかけた時だった。 「捕まれ!!」 私は目の前に差し出されたモノにしがみついた。
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