6人が本棚に入れています
本棚に追加
私が必死になって掴んだのは、浮き輪だった。
「はぁ、はぁ、っぁ」
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫、たす、かりました」
荒い息をしながら、声の主を確認すると、笑顔を浮かべた人がいた。
そして、私は、その笑顔に心臓を持っていかれたのだ。
その人が、今、自分の目の前にいる。
それが、日常になりつつある。
でも、あり得ない。
私の理想は、身長が高くて、高収入で、将来性があって、イケメンで、優しくて、リーダーシップがあって・・・・。
決して、今目の前で美味しそうにプリンを食べてる、厳つい、田舎くさい人なんかじゃない。
「きっとあれだ『つり橋効果』ってやつだ」
緊急時の心臓の高鳴りを、恋の高鳴りと勘違いしているだけ。
そうだ、と自分を納得させる。
「何か言った?」
「別に」
あれから三年。
私たちは何度も会っている。だけど、コイツに誘われているから乗っているだけ、だと思う。
決して好きなんかじゃない、はずだ。
なのに、気になり始めてる。
連絡が来ないだけで凹む。
声が聞きたくて、でも、自分からは電話は出来無くて。
「スッゴク、ムカつく」
「え、俺のこと?」
「そうに決まってるでしょ!」
明らかに、ただの八つ当たりだ。
最初のコメントを投稿しよう!