「賭けの代償」

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私が必死になって掴んだのは、浮き輪だった。 「はぁ、はぁ、っぁ」 「大丈夫か?」 「だ、大丈夫、たす、かりました」 荒い息をしながら、声の主を確認すると、笑顔を浮かべた人がいた。 そして、私は、その笑顔に心臓を持っていかれたのだ。 その人が、今、自分の目の前にいる。 それが、日常になりつつある。 でも、あり得ない。 私の理想は、身長が高くて、高収入で、将来性があって、イケメンで、優しくて、リーダーシップがあって・・・・。 決して、今目の前で美味しそうにプリンを食べてる、厳つい、田舎くさい人なんかじゃない。 「きっとあれだ『つり橋効果』ってやつだ」 緊急時の心臓の高鳴りを、恋の高鳴りと勘違いしているだけ。 そうだ、と自分を納得させる。 「何か言った?」 「別に」 あれから三年。 私たちは何度も会っている。だけど、コイツに誘われているから乗っているだけ、だと思う。 決して好きなんかじゃない、はずだ。 なのに、気になり始めてる。 連絡が来ないだけで凹む。 声が聞きたくて、でも、自分からは電話は出来無くて。 「スッゴク、ムカつく」 「え、俺のこと?」 「そうに決まってるでしょ!」 明らかに、ただの八つ当たりだ。
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