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そんなに大声ださなくても、なんて笑ながら言う。
結局の所、私達の関係は、ただの知り合いなんだと思う。
「キャァ!!」
隣のテーブルで突然、悲鳴が上がった。
驚いた私が振り向くと、一直線にこちらに向かってくる黒い物体の影が見える。も、もしかして・・・・・。
「あ、ゴキブリ」
平然と目の前の人は呟いた。
店内は悲鳴の嵐。
私は固まって動けないのに、目の前のソイツは、旨かった、と言いついでに手まで合わせている。
「なんで、そんな平然としてられるのよぉ!」
半分泣きながら叫んでいる私を、ヘラヘラと笑ながら見ている。
「たかがゴキブリ一匹に、凄い騒ぎで可笑しくってさ」
「な、なんですって!」
「ねぇ、」
目の前の人は私の足元に視線を向ける。
黒いアレが、細い触覚を動かし止まっていた。
「ゃ、」
目の前の人はさっきまで読んでいた喫茶店に置いてある雑誌を持った。
『バチーン』
その音に、ビクンっ、と首をすくめる私。
ソイツが勢い良く放り投げた雑誌は見事に的中した。
「あ、あ、ぁ」
「だから、驚き過ぎだって」
「う、ウルサイ、わね」
からかわれているのは分かったが、安心し過ぎて上手く言葉が返せない。
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