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案外、頼もしい奴だと感じたのは一瞬だけだった。
私のドキドキを返せ、とさえ思ってしまう。
私がにらんでいるのを半ば無視して、ニヤニヤ笑ながら、アイスコーヒーをかき混ぜている。
「ところでさぁ、知ってる?」
知るわけないじゃない、と噛みつく私。
「知りたいくせに」
どうせくだらない話、そうに決まってる。コイツが今まで私に知ったかぶりで話したものは『恐怖のDVDがレンタルされてる』とか『パチンコの必勝法』とか、私にとって興味がないものばかりなんだから。
それでもその話に耳を傾けてしまうのは、やっぱり気になっている証拠なのかも知れない。
「ほんとに知りたくないの?」
私の顔を見ながら椅子に寄りかかる。
その姿が格好よく見えてしまうのは、吊り橋効果のせいなんだ。そうに違いない、はずだ。
「知りたく、ない、わけじゃ、ない」
素直に知りたいと言えない私は、多分、めんどくさいと思われているに違いない。
「じゃぁ、教えてあげる」キラリっと少年のように輝き瞳に視線が離せなくなる。
「そのかわり」
「そのかわりって?」
「賭けをしようよ」
「賭け?」
どうやらコイツは、私の正格を操る技を、覚えたらしい。
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