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すっかり人がいなくなったことを確認したサエキは、銃をおろし、少女のほうに投げる。
それから装備していたナイフを2本とも外し、それも少女のほうに放り投げた。
「これで俺は何も持っていない。だからその男を放してやってくれ。」
少女は疑い深そうにサエキを見たが、素早く銃とナイフを部屋の隅に蹴り飛ばし、盾にしていた男を解放した。
解放された兵はよろめく足取りで逃げていき、残ったのはサエキと少女だけになる。
サエキはほとんど呟くように言った。
「まさかここに収監されていたとはな。……ずっとここに?」
少女は頷き、地面を指差す。
どうやら彼女は地下牢にいたらしかった。
「それで、なんでこんなことを?誰かに命じられたのか?」
少女は首をかしげて、困ったような表情を浮かべた。
見た目は6歳か7歳くらいに見えたが、言語能力はそれにはるかに及ばず、簡単な質問しか理解できないらしい。
気を取り直し、サエキはさらに質問を重ねた。
「何かされたか?例えば……こんなふうに。」
そうしてサエキが殴ったり蹴ったりする真似をすると、少女は頷いた。
「他には?」
少女は手近にあった木の燃えかすをいくつか持ってきて、その1つを地面においいてから自分を指差す。
「わかった、これがお前だな。他のは?」
「ここ、いた、いろいろ。」
「ここにいたやつらか?」
少女は頷き、自分だと言った木に、他の木を擦りあわせるようにしてみせた。
サエキははっとして、少女の体を確認する。
そして少女がやってみせたことがなんだったのかを把握し、胸くそ悪さに舌打ちをした。
「なるほど、それで殺したのか。その……つまり殺すっていうのは、痛くして、動けなくすることなんだが……。」
サエキは木の枝を拾い上げ、ナイフのように動かしてみせた。
それを見た少女は頷き、床に置いた木の枝を蹴り飛ばす。
足枷の鎖がじゃらじゃらとこすれる耳障りな音が高い天井にこだまする。
少女が嘘をついている様子はなく、サエキは自分の帽子を少女に目深に被せ、それから上着を脱いで彼女の体をすっぽりとくるんだ。
「とにかくここから出よう。頼むからおとなしくしておいてくれよ。」
少女はされるがままになっていたが、手にしたナイフだけはしっかりと離さず、いつでも攻撃できるように構えていた。
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