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中に入ると、部屋は薄暗くて静かだ。時間が17時くらいだったので、カーテンがされた窓からは夕日が垣間見える。
薄暗いからわかりづらいけど、やっぱり贅沢な暮ししているのかなぁ…
部屋の壁際には大きな絵が描かれた額縁があったり、高そうなランプがあったりとすごくおしゃれに見える。
暗幕付のベッドって…
一人息子が寝ているベッドは暗幕付きの物。研究所の人から、「古代のお姫様なんかはこういったベッドで寝ていた」と聞いた事あるが、男性でも使うというのは驚きだった。
『女の趣味を持った変態かもね!』
サティアってば・・・
このとき、サティアが相手を小馬鹿にするような台詞(ことば)を口にした。しかし、彼女の言葉を全否定はできなかったのである。
しかも、天井から垂れさがっている暗幕も完全に閉まりきっているわけではなく、少しだけ開いていたため、中の様子が少し見える。
綺麗な顔立ち…。同じ年齢には見えないな…
のぞき見した私の瞳(め)に映ったのは、蒼色と黒の入り混じった髪を持つ青年。その瞳は閉じられているので瞳の色とかはわからないが、肌色が白人にしてはかなり白いのが目立つ。
…あまりのぞき見は良くないよね…
そう思った私は、部屋の隅に運んでいたティーセットを乗せた台車の方に足を進める。
「…待てよ」
「!」
すると、後ろから少しハスキーな声が聞こえる。
思わず振り返ると、そこには先ほどまでベッドで眠っていた青年がいた。
「…お前、誰だ」
寝起きのせいなのか、いくらか不機嫌に見える。
しかも髪の色とはまるで違い、瞳は血のように赤くギラギラしている。腕にできた鳥肌を気にしつつも、ニコラさんから教えられた事を思い出す。
「ほ…本日からラビクリト家の家女中(メイド)としてお仕えさせて戴く事になりました、緑山沙智と申します。宜しくお願い致します、エレク坊ちゃま」
私はニコラさんから教わった通りに挨拶をする。
相手はいぶかしげそうな表情をするが、すぐに納得したような仕草をした。
「…毎回ご苦労なこった」
「?」
ボソッと何か呟いたようだが、はっきりと聞きとる事はできなかった。
「きゃっ…!?」
すると、青年は突然私の右腕を掴んだ。
「ふーん…東洋人か…」
「エレク…様?」
掴まれた右腕から痛みを感じつつも、何故こうしたのかという疑心の方が強かった。
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