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新撰組――――――――京都の治安維持のために結成された会津藩お抱えの組織。京の人々が好まない浅葱色の羽織を身に纏い、“誠”と書かれた旗を掲げて行動している。自分が今いる場所はおそらく、新撰組の屯所がある壬生村だろう。
「それにしても、不思議な子だよなぁ?!女なのに男装して、首には変な物巻いているし」
「!」
すると、背後から少し陽気な声が響く。
その人物は私の後ろ首に装着されているヴィンクラを指でつっついていた。
「…平助。話の途中を割り込むな」
「副長。まずは、この者の素性を吐いてもらわねば…」
床に正座をした青年・斉藤一が、鋭い目線で“副長”と呼ばれる人物に進言をする。
また、一応男性の着物を現代(むこう)で着せてもらい、髪型もポニーテールみたいに上で束ねたにも関わらず、男装しているのはバレバレのようだった。
「…だな。敵の間者という可能性もなくはないしな…」
「それは…!!」
その台詞を聞いた途端、私はこの場に連れてこられるまでの事を思いかえす。
この時代に降り立ってから何が起きたのかはちゃんと覚えているが、恐怖の余りに頭が真っ白になっていたので、どうして自分がこんな目に遭っているのかは理解できなかった。
すると、一番上座にいた局長・近藤勇が、穏やかな笑みを浮かべて口を開く。
「…今はとにかく、君の話を聞こう。処分はそれからだ」
「は…い…」
その穏やかな笑みは、威圧感もあるが何故か私にとっては安堵できるものであった。
そんな私の表情を確認したのか、副長である土方歳三が口を開く。
「…では、話してもらおうか。お前は何者で、何故奴らに捕らえられていたのかを」
私は大きく深呼吸をし、口を開く。
「…私は、緑山沙智といいます。ある人物を探して京へ向かっていたのですが、道中でとある人物と出逢い、一時の間だけ行動を共にしていました」
私は少し脚色しているが、この時代に降り立ってすぐの事を話しだす。
…最初に目覚めたのが山道の中で、“あの人”が見つけてくれたなんて言っても、信じてもらえないだろうし…
本当の事を避けながら、私は話を続ける。
「その方も京を目指していたので、到達し、彼の屋敷へ着くまでの道中を共に過ごしていました。名は確か…佐久間象山(さくましょうざん)…でしたね」
「佐久間象山…!!?」
その名前を聞いた幹部らは目を見開いて驚く。
「??」
あまりの驚きぶりに、私は戸惑ってしまう。
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