第1章

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 デパートで、綾は水着全部試着するつもりらしい。 その度に咲子を呼んで身体を見せる。 水着ではなく、身体を見せるのだ。 私にはないくびれ、私には出ない鎖骨のくぼみ。 パキパキパキ。。音が聞こえてくる。身体の奥から。  鏡に映った咲子と綾は本当に同じ人間なのかと思うくらい、違っていた。 さほどかわらない水着を何着も着て、結局一番最初に試着したオレンジのドットの水着に決めたらしい。 『咲子も早く決めなよー』 私は、店内をそそくさと一回りした。どうせ私が着れる水着はない。 今この店にいる全員が知っているだろう。 一番奥にあった真っ赤な水着を手に取った。 『マジ!?咲子だいた~ん。』 うれしそうに笑った。 私は水着を持ってレジに向かった。『え!もう決めちゃうの?試着しなよ』 何回も試着を進める。 彼女の顔を正面から見つめ返した。 『いいの、私は着ないから』 私も、笑いかけてみた。 未来のアンタに。
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