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「・・・あのぎらついた顔を思い出すと・・・うっ!!」
彼女は未だに、
善三郎を受け入れた訳ではないのだろう、
いつも善三郎が来るときにはこの儀式が始まる。
それも、
到着の直前には収まり、
部屋に善三郎を迎え入れる。
しかし今日は、
少し勝手が違う。
「くっ!!」
彼女を映し出していた鏡に中心から放射状にヒビが入った。
ピンポーンと部屋の入り口のチャイムが鳴り、
善三郎の到着を知らせる。
彼女は長い髪を指で後ろに流し、
嘔吐で乱れた身だしなみを整え、
荷物を持った。
そのまま部屋の入り口へ向かう。
「や、
迎えに来たよ」
変わらない善三郎がそこにいた。
冷静を装いながら彼女は言う。
「準備は出来てます、
出かけましょうか」
「美佐、
今日もきれいだね、
旅も楽しくなりそうだ」
二人はそのままエレベーターへ向かった。
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