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斉藤さんはまたフン! と鼻を鳴らすと、驚くようなことを言い放った。
「紺野さん、聞きましたよ。
坂崎課長とお付き合いなさってるそうじゃないですか。
うまいことやりましたよね? これで逃げ道確保じゃないですか」
「……なっ!?」
「はい、すとぉーっぷ!!
斉藤も、そこまで」
部長のどこか間の抜けた声が、会議室中に張り巡らされていた緊張の糸を断ち切った。
カッとなっていた私の頭も少しずつ冷静さを取り戻していく。
「斉藤~、勝手な思い込みフィルターを通して紺野を見ない~。
度が過ぎてるぞ」
「……すみません」
「違う。俺じゃなくて紺野に謝れ」
いつになく厳しい部長の声に私も斉藤さんもハッとした。
「……紺野さん、申し訳ありませんでした」
ちっともそう思っていなさそうな顔で、斉藤さんはそう口にした。
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