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「私はね、紺野さん。
香の露と現場の彼らを守りたいんです。
ずっと私にできることはないか考えていました。
そこに桜屋デパートとの話が来た。
これだ、って思ったんです」
「でも、それならそうと私にも言ってくだされば……」
「じゃあ、私が事前に話したとして、あなた賛成してくれました?」
「えっ……!?」
斉藤さんが眼鏡越しに私に鋭い視線を送る。
何もかも見透かされている気がした。
「先方も坂崎課長の案を気に入ってたんだ。
それをわざわざひっくり返すようなこと、あなたはしないでしょう?」
「はい……。
取引先が満足するものをご用意するのが私たちメーカーの使命だと思っていますので」
そんな私を見て、斉藤さんは軽く口角を上げた。
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