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「私はまだ勝算があると思っています。
百貨店にいらっしゃるお客様は少しでも品質の良いものを好まれるし、舌も肥えている。
この土地の食卓をずっと支えてきた香の露の一級品だからこそ、地元を代表する桜屋デパートに置く価値がある。
そうは思いませんか?」
斉藤さんの熱意のこもった話に、いつの間にか胸を熱くしている自分がいた。
「流行りのものを追えば一時は爆発的に売れるかもしれないけれど、いつかみんな飽きてしまう時がくる。
でも香の露のように、代々受け継がれてきた味には飽きることはありません。
私は一時の利益を追うのではなく、広く長く愛されるものを自分達の手で作り上げたいたいんです」
……気がつけば、私は斉藤さんの話に何度も頷き、お腹の底から力が漲っていくのを感じていた。
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