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「わ、私のことはもういいですから……。
そんなことより、安藤さんの結婚相手ってどんな方なんですか?」
打ち解けた雰囲気に気を良くして、ついつい私はそう安藤さんに尋ねていた。
「……そうねえ。
例えば彼は、ここの経営なんかに関しても割りと進歩的な考えを持ってるんじゃないかしら」
さっきよりも少しだけ表情を引き締めて、安藤さんは結婚相手について話し出した。
「私、実は父のやり方には危機意識を持ってるの。
祐のお父様の件も含め、桜屋は父が私物化している部分もあるわ。
旧態依然としたやり方では今の時代は通用しない。
はっきり言って、社内の風通しも悪いしね」
さっきまでの自信なさげな様子から一転して、安藤さんの話ぶりは実にイキイキとしている。
安藤さんはもうすでに経営に携わる者としての自覚も、将来への展望も持っているんだ。
彼女はもう、前を向いて新しい道に一歩踏み出していた。
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