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「はじめまして。一応安藤のフィアンセの柏野 悠と申します。
私は四階の紳士服部門におりますので、ご用の際はぜひ」
そう言うと彼、柏野さんは実にスマートなやり方で名刺を私に差し出した。
「柏野は二つ年上だけど、私とは同期なの。
ずっと一緒に現場で戦ってきた、いわば『戦友』みたいなものね」
そう言ってにっこりと微笑む安藤さんに対して、
「ずいぶんと勇ましいね」
と苦笑する柏野さん。
確かに、結婚相手を紹介するのに相応しい言葉じゃない。
「でも僕もいつまでも戦友で満足してるわけじゃないですから」
そんなこと言って私に向かって微笑まないでほしい。
まるで自分に言われてるようで、赤面してしまう。
それなのに安藤さんは……、
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