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彼女に連れてこられたのは、デパートの三階にあるカフェ。
このカフェの奥は大きな窓で切り取られていて、眼下にこの街のメインストリートを見下ろすことができる。
視線を下に向けると、ゆっくりと進む路面電車と、群れをなす車たち、そしてまだいくらか残る夏の日差しのせいで眩しく反射するアスファルトを行き交うたくさんの人々が見えて、一瞬自分がここにいる理由を忘れた。
「ここにしましょう」
安藤さんに促され、私たちは窓側に二つだけあるテーブル席のうちの一つに腰を下ろした。
「どうぞ、遠慮なさらないで。
お昼まだなんでしょう?
ここのホットサンドは絶品よ」
彼女にこんなふうに見つめられたら、きっと何も喉を通らない。
でも、せっかく安藤さんが勧めてくれのに何も頼まないのも気が引けて、私は彼女に言われるままホットサンドとアイスコーヒーのセットを頼んだ。
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