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「紺野さんは祐から何もかも聞いてるのかしら?」
そう言うと、安藤さんは紅茶のカップにそっと口をつけた。
私もアイスコーヒーを一口口に含む。
自分で思っていた以上に緊張していたらしく、よく冷えたコーヒーが渇いた喉を滑り落ちていくのをはっきりと感じた。
「安藤さんとの過去のことや、御社へ誘われたことなんかは聞いています」
「そう……」
安藤さんはぽつりと呟くと、視線をそのまま窓の外へと向けた。
頬杖をついて、視線の先で何かを追いかけているようだった。
「ずっと欲しいものは何でも手に入れられると思ってたのよね、私」
相変わらず、私に横顔を見せたまま安藤さんはポツリと呟いた。
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