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「……私、結婚するの」
「えっ!?」
驚いて顔を上げると、安藤さんは首を傾げて微笑んでいた。
「知らなかった?」
「はい……」
何故だろう、結婚するのは私じゃないのに。
安藤さんの気持ちが透けて見えた気がして、私は目に涙を浮かべていた。
「あら、そんな顔しないで」
そう言う安藤さんも綺麗な眉をしかめている。
でもすぐに、彼女はいつもの美しい笑顔に戻り、続きを話し出した。
「最初は祐に結婚を止めて欲しかったの。
でも彼は何も言ってくれなかった……。
愚かだと思うでしょうけど、私、自分がそんなに彼を傷つけていたなんて思ってなかったの」
だけど、そう言う安藤さんの表情にははっきりと後悔の念が浮かんでいた。
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