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翌日、私は朝早くから忙しなく鳴く携帯に叩き起こされた。
その電話は祐からで、彼は一泊分の荷物を用意して部屋で待っているようにと私に告げた。
私が何度行き先を尋ねても、彼は決してそれを教えてはくれなかった。
そして今現在、私たちは彼の愛車に乗って国道をひた走っている。
眼前に迫る、広大な山々。
紅葉にはまだ早いけど、漂う爽やかな空気に微かな秋の気配を感じる。
昨日あんなことがあって、彼の口からまだ何も聞き出せていない私は、最初からずっと塞ぎがちだった。
「やっぱ、空気がうまいな」
信号待ちで車を停めた祐が私に向かって気遣うように微笑んだ。
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