禁忌

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 コロネオは聞き返した。 「伝承の四司教かね?」 「いや、この冬に入ったはずだ。名はマイクラ・シテアというらしい」 「あそこには入れぬよ。  偉大な魔導師ルクフェルの手によるものじゃ。  今となっては、開封の呪文を知るわし以外の者では、神でさえ、開封できぬ。  ましてや教会外部の人間では、近寄ることもなかなか」 「過去には、誰が知っていた?」  シ・ルシオンの問い掛けに、コロネオは眉をひそめた。 「先代のハルバート大司教じゃな。  もう三年前に亡くなっておる」 「そうか」  シ・ルシオンは窮してしばらく黙った。  しばらくその様子を見ていたが、やがてコロネオは、 「まあ、一度一緒に来るがよい」 と言った。 「夢枕で大賢者ソルド様がおっしゃった。  お主がここに来ているから、望みを叶えよと。  わしはトルキスタ聖教の司教ゆえ、神託に委ねねばならぬ」  そう言って老人は、印を切ってささやかに祈った。  大聖堂を、小さな老人のおぼつかない足取りを先導に、巨人が歩いた。 まだ朝は明けない。 夜半過ぎだろうか。 廊下、階段と歩いても、警備の人間さえあまりいない。 あまりに無警戒だった。  ずいぶん歩いた頃、コロネオが廊下の途中で不意に立ち止まった。 懐からネックレスに付けられた大きなメダルを取り出し、それを、煉瓦の壁に空いていた小さな割れ目に差し込んだ。  すると、壁が突然奥に動き、入り口が現れた。 「これが封印か?」 「いや、こんな小細工ではない。  このメダルなら、この聖堂内で五人が持っている」  二人の靴音が長い回廊に響く。 湿気が強く、圧迫されるような空気だった。 かびのにおいもした。  曲がりくねった回廊を歩いていくと、やがて大きな扉に行き着いた。 コロネオはまた先ほどのメダルを出し、扉にある溝に差し込む。 すると扉は簡単に開いた。  中に入る。 狭い空間のようだ。 ランタンを掲げたコロネオは、短く鈍い悲鳴を上げた。  シ・ルシオンが見た光景。 それは、狭い部屋一面に散らばる大量の水晶の破片と、バラバラに引き裂かれた数体のミイラだった。 「封印が!」  正面に、開け放たれた重々しい鉄の扉がある。 中は書庫になっているようだ。
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