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「一体どうやって……」
コロネオはうめいた。
「封印の秘密を、誰かが売ったということではないか」
「馬鹿な、聖職者たる者、誰がそんなことを」
「聖職者である前に、人間に過ぎぬ。
この荒れ果てたバザの街がそう示している」
シ・ルシオンの冷徹な断言に、コロネオは膝を折った。
「何ということじゃ。
封印が解かれては、大変な事になる」
「どうなる?」
シ・ルシオンは老人に尋ねた。
「わからぬ、禁忌の中身は、伝承に残っておらぬ」
「わからぬならば、嘆くだけ無駄だ」
シ・ルシオンはコロネオを置き去りにして、破られた封印の奥に踏み込んだ。
コロネオのしわがれた嗚咽が殷々と辺りに響いているが、もはやシ・ルシオンは老人に興味がなかった。
封印の奥の書庫は、酷く荒らされていた。
四角い小部屋である。
書棚が各壁面に据えられ、そのほとんど全ての本が、床にばらまかれていた。
古代の書籍らしく、見たことのない文字で書かれていた。
全ての表紙に三つ叉槍の紋章が刻印してある。
シ・ルシオンは、小部屋を出て、コロネオの所へ戻った。
呆然と座り込んでいる老人に顔を近づけ、尋ねた。
「マイクラ・シテアという、魔導師とかいう輩がここに入ったらしいが、聞いたことはないか」
コロネオの目は焦点が定まっておらず、シ・ルシオンの言葉も耳に入っていない様子だった。
シ・ルシオンは老人の胸ぐらを魔神のような力でつかみ、燃え上がる眼光で睨んだ。
「ひっ」
「マイクラ・シテアという名を知らぬかと聞いている」
老人は必死の形相で首を左右に振った。
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