禁忌

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 騎士たちは戦慄した。 「あなた達、本当に悪いのは馬鹿なコロネオなのに、罪もない人達をいっぱい殺しましたねぇひひひゃひゃ」  ぼろ布の男が、杖を振りかざす。 すると、真っ赤に燃え上がる溶岩の玉が騎士たち一人一人に向かって降り注いだ。 騎士たちは、それに触れただけで燃え上がった。 あっという間に騎士団の半数程が死んだ。 犠牲者は千人ぐらいいた。 「まだ生き恥をさらしてる連中がいるねぇへへひひ」 もう一度ぼろ布の男が杖を振りかざそうとした時だった。  何者かが疾風のように、ぼろ布の男に切りかかった。 巨大な剣が振り下ろされ、ぼろ布を引き裂き、杖を砕いた。 「よくかわした」 「何者!」 「シ・ルシオン」  猛烈な一撃が折り返す。 ぼろ布の男はシ・ルシオンの剣をすんでの所で再びかわした。身のこなしというより、瞬間移動のような物だった。 それでもぼろ布は少し引きちぎられた。 シ・ルシオンはさらに突きを繰り出す。 が、今度は完全に空を切った。 ぼろ布の男は一瞬で鐘楼の辺りまで移動していた。 「おのれぇぇいい」  地獄のどよめきのような声でぼろ布の男はうなった。 うなり声が、周りにいた人間達の脳に直接響く。 また何人かがショック死した。  しかし、シ・ルシオンは微動だにしない。 「貴様はマイクラ・シテアと見た。俺は貴様を探しに来た」  よく響く野太い声でシ・ルシオンは呼ばわった。 「なんだと?  なぜわしの名を知る?」 「人に聞いた」 「なにぃ?!」  ぼろ布の男、マイクラ・シテアは、鐘楼の辺りで浮かんだまま、酷く忌々しげな声で喚いた。  シ・ルシオンは、その辺りに転がっていた騎士の死体から槍を取り上げた。 それを鐘楼の前に浮かぶ魔導師に向かって投げる。 稲妻のようだった。 すんでの所で魔導師はまたかわす。 「許せぬ」  魔導師は何か印を切るような仕草をした。 が、何も起こらない。 「馬鹿な」  そこへもう一本槍が飛んで来る。 慌ててかわすが、凄まじい風切り音がマイクラ・シテアの耳元をかすめる。 「深い魔が呼び出せぬ」  マイクラ・シテアの後ろに、めらめらと紫にもえる割れ目が現れた。 そこへ魔導師は吸い込まれる。 そうかと思うと、すぐに亀裂は消えてしまった。  突如、夜が明けた。
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