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バザの惨劇から半年余り経った頃、シ・ルシオンはバルダの北東ガラシェへ戻った。
リーファに会うためだった。
去年の真冬以来、リーファとは会っていない。
会える確証もなかったが、彼はリーファを求めた。
次の戦場が知りたかったし、魔導師マイクラ・シテアと戦うすべを知りたかった。
ガラシェの冬は厳しい。
街道は毎日、地吹雪が吹き荒れた。
例によって山中で獣を仕留め、肉と毛皮を調達し、岩陰で夜を明かす日々が続く。
普通ならとうに投げ出している様な、半ばあてのない苦しい旅旅路である。
が、彼はただ黙々と旅した。
たまに街道の茶屋などで聞く噂では、ガラシェはバルダに服従したらしい。
結局一戦も交えずだった。
シ・ルシオンは一年前の事を思い出し、少し苛立った。
結局ここに戦場はなかったのだ。
だが、彼はもう、マイクラ・シテアという新たな敵を得た。
何千の兵よりも手強く厄介な敵だった。
彼はそれに、知らず満たされていた。
その日も岩陰で、小さな火で暖を取りながら、彼は夜を過ごしていた。
いつの間にかうたた寝する。
そこへ、声掛ける者がいた。
「お久し振りですね。
また会えて嬉しい」
シ・ルシオンは、全く気配に気付かなかったが、前もそうだったので、ことさら驚かなかった。
リーファだった。
シ・ルシオンは起き上がる。
「奴を倒すために、俺は何をしたらいい」
不躾に彼は尋ねた。
リーファは困った。
しばらく胸の前で手を揉み、目を漂わせた。
「私には、どう説明したらいいかわかりません。
でも、ソルドならわかるでしょう」
「ソルド?
トルキスタ聖教の神か?」
「神ではありません。
人です。
私の古い友人でした。
もう千年も前に亡くなりましたが」
「話にならん」
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