氷壁

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 シ・ルシオンは多少呆れた。 「死人にどうやって教えを乞うのだ」  リーファは哀しげな顔になった。 「そうですね」  二人ともしばらく無言になった。 リーファはうつむき、目を左右に動かし、小さな手を胸の前で握っている。  シ・ルシオンはこういう時間が苦手だった。 わずかに横を向き、言葉を絞り出した。 「ソルドとは、どんな男だったのだ」  リーファはぱっと顔を上げた。 「彼は、トルキスタ聖騎士団の総帥でした。  魔導師ブサナベン率いる魔物の軍との戦いを勝利に導いた立役者です」  彼女は少し笑った。 「軽薄な雰囲気の、よく喋る人でした」  彼女は続けようとしたが、そこで何かを思い出したらしかった。 「彼が亡くなる前、私に言い残した事があります」  シ・ルシオンは興味を惹かれた。 「何だ」 「ガラシェで時を待ち、自らをもって聖地ラダを封ぜよ」  リーファは穏やかに笑った。 「だから私は、ここにいます。  ソルドの言葉は、一度も外れたことがないのです。  彼は、ものすごく頭のいい人でした」  シ・ルシオンには理解できなかった。 が、彼はリーファが話すのをじっと聞いていた。 「あなたはドルアーノに、少し似ています。  彼は優しかった」  彼女の目に、少し憂いが漂う。 「ソルドがブサナベン討伐に成功したのは、ドルアーノが命懸けで戦ったからです。  シ・ルシオン、あなたと比べたら、彼は凡庸な戦士でした。  あなたがあの時代に生きていれば、本当に魔を滅ぼせたでしょうに」 「俺は今の人間だ」
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