魔物

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「化け物は」  震えるか細い声で尋ねた。 「旅の戦士様が退治してくれたよ。  あんたが食われる直前に、真っ二つだよ。  だから、大人しく寝てな」  ローブは、それがシ・ルシオンであるとすぐに確信したが、今はどうでも良かった。  幸い後遺症もなく、ローブは順調に回復した。 十日も経てば、彼はすっかり元気になった。  彼は街で、シ・ルシオンの行方を聞いて回った。 どうやら魔物を退治してすぐに旅立ったらしい。 が、噂どおりの巨人なら、すぐに見つかるだろうと思った。 話では街道を東へ向かったという。 ローブは馬車で跡を追った。  五日程急いで行くと、街道沿いの街で巨人の噂を耳にした。 巨大な剣を背負っていたらしいから、間違いなかった。 数日前に北へ向かったらしい。 北はガルバ、さらに北へ行けばガラシェ方面である。 ローブは馬車を急がせた。  二日後の昼下がり、急に空が暗くなり、激しい雷雨に見舞われた。 とりあえず雨宿りできそうな場所を求めて馬を急がせる。 石畳から跳ね上がる飛沫で、少し辺りがかすむ。  激しい稲妻が走る。 刹那、辺りが眩しくなり、その時街道の先に、人影が閃いた。 それはまだ結構先を歩いているのに、ローブの脳裏を強くとらえた。 「あれだ」  彼はそう直感した。 馬車は雨水を撥ね上げながら走った。 人影が見る見る近付く。 確かにそれは巨人で、その巨体をも凌ぐ巨大な段平を背負っていた。  ローブは巨人の前に回り込んだ。 急に止まったから、馬がいなないた。  巨人は立ち止まった。 「あんた、シ・ルシオンだろう?」  ローブは、轟く雷鳴に負けじと声を張り上げた。 馬をなだめ、馬車から飛び降りる。
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