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「なに、貴様、その口振りは、何か知っておるのか」
「はい、しかし、いや、でも」
「く、詳しく話せ!
貴様、三年も調査させてやったのだ、この騒ぎについて役に立たぬとあらば、ただでは済まさんぞ!」
よく言うぜ、と内心ローブは舌打ちした。
が、彼は真剣その物の顔つきで、
「しからば、そうですね、事が事だけに、ハゼン大司教様も交えた方が」
ハゼンは、魔族対策の責任者である。
実質は名目職で、出番などここ数十年なかった。
講話の眠さで有名な、迷信好きの老人である。
「この聖地ザナビルクが脅かされている今、一刻を争います」
「わ、わかった」
かかった、とローブは内心嘲笑した。
その日の夜には、ハゼンをはじめ、魔族対策の担当八名と、市内警備担当のロド聖騎士団部隊長などが招集された。
ロドはさすがに勇ましいふりをしていたが、他の面々は明らかに怯えていた。
「本日は、私ごときのご報告に、極めてお忙しい中」
どうせ暇だろうが、と心の中で呟く。
「お集まりいただき、誠にありがとうございます」
さらにしばらく、長々と謝辞を続ける。
面々は、多少満足げである。
「で、最近の奇怪な現象と、貴様の調査した事、説明せよ」
上司の神官が、酷く偉そうに、自分の手柄であるかの様な振る舞いで促した。
ローブは半ば無視して、説明を始めた。
説明の中身は、多少脚色はあるものの、およそ正しい内容だった。
「まず、ご記憶にもありましょう、バザの封印についてです。
事件の経緯については、まだ詳しく判りませんが、マイクラ・シテアという魔導師が、単独で行なったと見るのが有力です。
聖騎士団の虐殺も、目撃証言から、たった一人の魔導師が行った事は、ほぼ確実です」
「馬鹿な」
ロドが怒気に満ちた声を吐いた。
「若造、貴様は我が聖騎士団を愚弄するのか。
どうやって千人の騎士を、たった一人で殺すのだ」
だがローブは、落ち着き払って首を横に振った。
「この事件の本当に深刻な所は、まさにそれなのです」
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