4人が本棚に入れています
本棚に追加
会議室は、救世主らしき人間の登場に、にわかに明るい空気になった。
だが、ローブと、事の異常さを感じ取ったロドだけは、険しい顔つきだった。
「なるほど、これは、騎士としては恥ずかしながら、率直に怖い」
ロドの呟きに、会議の面々が、きょとんとした顔になった。
「シ・ルシオンは、味方なのか」
「そうなるべく、動かねばならないでしょう」
「うむ、だが、どうする?」
周りになど目もくれず、ロドはいかつい顔で考え込んだ。
状況を理解できない周りは、ただローブとロドの顔を交互に見比べるだけだった。
「捜索しましょう。
それしかないでしょう。
とはいえ、当てもなく、というのは無理です。
とりあえず、各地の戦場を当たりましょう」
ローブの提案に、一人ロドだけがうなずいた。
やがて、聖騎士団主導のもと、シ・ルシオンの捜索が始まった。
表立っての活動ではなく、どちらかと言うと潜入捜査に似ていた。
程なく各方面から情報が集まる。
が、あまり有力な物はなかった。
代わりに、妙な話が出てきた。
「バティルで魔物が出たらしい。
馬鹿な話だとは思うが、君はどう思う?」
教皇庁地下に与えられた、暗く狭いローブの執務室。
ここへロドがやってきて、そう告げた。
最近ロドは、ちょくちょくやってくる。
相変わらずのはみ出し者扱いのローブにとっては、唯一の話し相手と言って良かった。
それはロドが比較的現実主義な軍人であり、彼もまた、浮き世離れした僧侶が多い教皇庁に、居心地の悪さを感じていたからだった。
ロープに対し完全な好意でもないが、少なくとも仕事相手として一定の評価はしていた。
また、利用しようとも考えていた。
「ああ、そうですか」
ローブの返事は素っ気ない。
「驚かんのか」
「そろそろだと思っていましたから」
ローブはそう言って、全ての壁にびっしり並んだ本の棚から、一冊取り出した。
「ブサナベンの書、第三章には、下級の魔物の実体を魔界から呼び出す方法が記載されています。
マイクラ・シテアがそこまで解読したのでしょう」
最初のコメントを投稿しよう!