魔物

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 会議室は、救世主らしき人間の登場に、にわかに明るい空気になった。 だが、ローブと、事の異常さを感じ取ったロドだけは、険しい顔つきだった。 「なるほど、これは、騎士としては恥ずかしながら、率直に怖い」  ロドの呟きに、会議の面々が、きょとんとした顔になった。 「シ・ルシオンは、味方なのか」 「そうなるべく、動かねばならないでしょう」 「うむ、だが、どうする?」  周りになど目もくれず、ロドはいかつい顔で考え込んだ。 状況を理解できない周りは、ただローブとロドの顔を交互に見比べるだけだった。 「捜索しましょう。  それしかないでしょう。  とはいえ、当てもなく、というのは無理です。  とりあえず、各地の戦場を当たりましょう」  ローブの提案に、一人ロドだけがうなずいた。  やがて、聖騎士団主導のもと、シ・ルシオンの捜索が始まった。 表立っての活動ではなく、どちらかと言うと潜入捜査に似ていた。  程なく各方面から情報が集まる。 が、あまり有力な物はなかった。  代わりに、妙な話が出てきた。 「バティルで魔物が出たらしい。  馬鹿な話だとは思うが、君はどう思う?」  教皇庁地下に与えられた、暗く狭いローブの執務室。 ここへロドがやってきて、そう告げた。 最近ロドは、ちょくちょくやってくる。 相変わらずのはみ出し者扱いのローブにとっては、唯一の話し相手と言って良かった。 それはロドが比較的現実主義な軍人であり、彼もまた、浮き世離れした僧侶が多い教皇庁に、居心地の悪さを感じていたからだった。 ロープに対し完全な好意でもないが、少なくとも仕事相手として一定の評価はしていた。  また、利用しようとも考えていた。 「ああ、そうですか」  ローブの返事は素っ気ない。 「驚かんのか」 「そろそろだと思っていましたから」  ローブはそう言って、全ての壁にびっしり並んだ本の棚から、一冊取り出した。 「ブサナベンの書、第三章には、下級の魔物の実体を魔界から呼び出す方法が記載されています。  マイクラ・シテアがそこまで解読したのでしょう」
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