魔物

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 本のページを探しながら、ローブは言った。 「君は、この本を全部読んだのか」 「当然です」  ページを開いて、ローブはロドにそれを示した。 「ブサナベンは、魔物の軍勢で、ソルドやドルアーノの軍勢と戦ったそうです」  それを聞いてロドは唸った。 「ならば、有り得るというのか」 「あなたの事ですから、報告を疑っていらしたのでしょう」  ローブは小さく笑った。 「おかしいか?」 「いいえ、軍人なら、そうあるべきでしょう。  妄想家の軍人なんて…」  ローブは何かを思い出したように、少しロドから眼を逸らし、伏し目になった。 が、すぐにまた笑った。 「しばらくすれば、死人が街を徘徊しますよ」 「薄気味悪いことを言うな」  苦い顔のロドを見て、ローブは軽やかに笑った。 「ところで、シ・ルシオンの居場所はつかめそうですか」  ローブは話題を変えた。 「残念ながら」  ロドはかぶりを振った。 「ここ数年、戦場に現れていない」 「そうですか」  ローブはしばらく考え込んだ。 綺麗な、まだあどけなさの残る顔が、随分静かに見えた。  やがて彼は口を開いた。 「先程、魔物が出たとおっしゃいましたね。  それは、どこです?」 「バティルだ。  さっき言っただろう」
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