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最後の方は、少し声が震えていた。
ファリアヌスは、その言葉が聞こえているのかいないのか、ただ呆然と虚空を見つめながら、座っていた。
なにがし少将はいかにも落胆したようにぎょろ目を臥せ、長々と嘆息した。
彼は懐から小さな木箱と小瓶を出した。
恭しくファリアヌスの前にひざまずき、小瓶を一旦脇へ置き、木箱のふたを開けてファリアヌスに差し出した。
中には黄色い薬の粒が三つ、入っていた。
「苦しみは刹那にございます故、お覚悟召されよ」
少将の声はずっしりと重く、有無を言わせぬ武人の強さがあった。
それでもファリアヌスは、しばらく蝋人形のように動かなかった。
少将がわずかに困惑し、しかしもう一度自決を促そうとしたとき、ファリアヌスは腹の底からうなり始めた。
「ぅう、うぅうぅ、うぅうぅおのれぇえ、おのれぇオデュセウス、おのれぇオデュセウスぅう!」
ファリアヌスは座ったままわなわな震え、目を飛び出るほど見開き、長く薄い髪を振り乱した。
歯茎から血が出て、口の端から溢れ出た。
「許さんぞオデュセウスぅう、許さんぞオデュセウスぅう、八つ裂きにして、踏みにじり、地獄へ叩き落としてやるぅう!」
ファリアヌスは少将の差し出す木箱をむしり取り、薬をひっつかんだ。
それを一気に口に放り込み、がりがりと噛み潰し、咽を鳴らして呑み込んだ。
一瞬時間が止まったように、牢内が沈黙した。
その刹那の後、ファリアヌスは胸をかきむしり、のた打った。
「ぐあぁあ!
がぁ!
がぁ!」
彼は床を転げ回り、断末魔の声を地下牢に響かせた。
「おのれオデュセウスぅうぅ、おのれオデュセウスぅうぅ、おのれオデュセウスぅうぅ!」
彼は、大量の吐血をした。
辺りが血の海になり、少将達二人は思わず飛び退いた。
ファリアヌスはビチャビチャと血の海の中を転げ回り、数回激しく痙攣したあと、動かなくなった。
少将達二人は酷く苦い顔になった。
彼らの慣れている戦場のそれとは違う、嫌な死に様だった。
「うむ、うむ。
さて、あぁ、まぁ、あとは看守に任せるとしようか」
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