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 ホルツザムの首都グルドでは、国葬の後片付けが行われていた。 ザーグ砦攻略に多大な功績を残したものの、かの地で全滅した、オデュセウスの突撃部隊の葬儀であった。 国王セルジオ自らが弔辞を述べた程であり、オデュセウスたちを惜しむ涙で首都は満たされていた。  英雄将軍バルザムも、悲嘆に暮れていた。 やがてはホルツザム全軍を統べるであろうと期待していた若者の死は、引退を考えている老いた将軍に、新たな重圧としてのし掛かった。  ザーグ砦の攻防以来、バルザムは酷く老けた。 一回り小さくやせたし、このところ咳が目立つようになった。 覇気が失せ、虚ろな姿もしばしば見かけられた。 「七十、か」  五十まで生きられたら珍しい中、彼は七十であった。 戦場で鍛え上げられた強靭な体力と精神力が、彼を長年支え続けた。 数十年英雄であり続けたが、晩年は二人の敵に悩まされた。  一人は、たった一人で戦術を打ち砕いてしまう超戦士シ・ルシオン、もう一人は、ザーグ砦の守将ドバイルだった。 この二人だけには、結局彼は一度も勝てなかった。 「俺はもう、老いぼれたのか」  五十過ぎのころシ・ルシオンと戦ってそう思い、六十過ぎてドバイルと戦い、再びそう感じた。  そして再び、オデュセウスを擁してなおシ・ルシオンに負け、積み上げてきた全てをあの巨大な剣で打ち砕かれた気がした。  オデュセウスたちの国葬が終わった夜半、グルド城内の彼の居室近く、廊下で一人、彼は倒れていた。 たまたま側を通った内務郷フォードとその護衛数名らが発見し、医者が呼ばれた。 心臓を押さえて苦しんでおり、応急の蘇生措置がとられた。 結果、辛うじて一命は取り留めたが、その日から彼は床に伏せた。  驚くほど速くバルザムは痩せた。 数日で平凡な老人になり、数週間で末期の枯れ果てた老人になった。 「わしはもう、死ぬ」
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