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 寝台に横たわり、侍従にそう力なく呟く姿は、もはや歴戦の猛将ではなかった。  そんなある夜である。 「無様な年寄りよな」  脳髄に直接這い入ってくるような、身の毛のよだつ声に、バルザムは仰天して目を覚ました。  その刹那、彼はまだ自分が悪夢を見ている途中だと思った。 正確には、そうであってほしいと思った。  そこには黒い陰がいた。 目が赤く光り、その周囲には限りない数の死者の嘆きが渦巻いていた。 「これが死神か」  バルザムはそう思った。  が、 「死神?  あの程度の無力な輩と一緒にしてもらっては困りますよ、英雄将軍殿ぅふふぁふぁひひ」 という影の笑い声に、バルザムは半狂乱に恐れおののいた。 「英雄将軍殿、あなたは明後日、めでたく死にます」 「だ、だ」  バルザムは必死で「黙れ」と叫ぼうとした。 しかし喉は焼け付き、ひゅうひゅうと鳴るだけだった。  影から突如、紫色の巨大な老人の顔が突き出てくる。 歯はなく、しわだらけで、しかし強烈な悪意がほとばしる顔だった。 「貴様は悔しかろう。  シ・ルシオンとかいう化け物に、貴様の栄光はズタズタにされた。  ドバイルという小僧にも多少やられたが、まだまともな戦になっただけに、言い訳も立つ。  しかし、勝ち戦をあの化け物にひっくり返され、何度も大恥をかいた。  死ぬ間際にも、最高の手駒を擁してもだ。  奴の前では、英雄将軍どころか、愚鈍な将軍に過ぎなかった。  そうじゃろう?」  バルザムは心臓をえぐられた気がした。 わなわなと震え、叫ぼうとしてもそれさえできず、やがてはらはらと涙をこぼした。 「しかしこの老いぼれの寝たきりでは、復讐も叶わぬ夢。  このまま屈辱にまみれて死ぬ。  何と哀れな英雄将軍であることかぁひゃひゃひひ」  紫の顔が残忍な哄笑で歪む。 無力なバルザムは、気も狂わんばかりに怒り、嗚咽した。  突如その目の前に、紅くぎらぎらと渦巻く宝玉が出現した。
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