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「そうか!
なるほど、やはり君は優秀だなぁ、さすが大隊長を任せられるだけの男だ!
わしなどは、思い付きもしなかった。
よし、すまんが早速、君の案の準備を頼むよ。
あぁそうだ、君の部隊を城の陸屋根に配備しよう。
手薄で困っていたんだ。
きっと君の部隊が今回の防衛の要になる。
ちょっと大変だが、このとおり、よろしく頼むよ」
ボルスは禿頭をぺこりと下げた。
とても天下の名城を守る主将のする事ではない。
逆に部下の大隊長が恐縮してしまった。
彼自身気づいていないが、この一見頼りなさそうな振る舞いこそが、彼の強さだった。
自分に自信がない故に、有能な人間にちょっとしたことで心酔して任せてしまう。
任された方は、全力で遂行する。
しかも彼自身が的確な方針を持って、それに従ったアイデアを求めるので、全体として妙な方向には進まない。
「吹雪には、そう強くない」
ボルスは魔物の軍勢について、そう感じていた。
北限の軍であるルビア軍にとって、これは幸運だった。
「だまされてはならん。強引なようで、案外慎重だ」
魔物の指揮官について、ボルスはこう評価していた。
吹雪に弱いのはそうだが、本当に弱いというよりも、自分が雪の中の戦いを知らない故に、安全策を採っている。
よって、勝てると見れば雪は関係ないだろう。
ガイルからの一報から四日が経過した。
駐屯軍のうち、第四部隊以降が順次城に入ってくる。
既に近隣の住民も収容しており、城内は普段より人がかなり多い。しかし今のところ大きな混乱はない。
国王ハーレス五世自らが城内を積極的に歩き、避難者達を慰問しているのも大きい。
ボルスの懸念は、いまだ安否の知れないガイルと、第一から第三までの部隊員の状況だった。
既に数十名が無事城に入ったが、まだまだ足りない。
ルビア軍の最精鋭であり、ましてや仲間である。
それ以前に、銘々家族もいるであろう人間である。
ボルスはそれを思うと、自ら捜索に乗り出したかった。
しかし、彼にはボルネットにいる百万の人々を守る要である。
実に歯痒かった。
昨夜までは吹雪がひどかったが、今は小降りである。
昼になれば明るさも増し、視界もある程度開けた。
偵察によれば、魔物の軍勢はもう間もなく視界に入ってくるはずだった。
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